こんな悩みをお持ちではないですか?
- 個人事業から法人成りするタイミングっていつ?
- 法人成りする時の注意すべきことってある?
- 法人成りするメリットってなに?
自分で事業を開始するときは、まずは個人事業主として登録して仕事を開始する人が近年増えています。企業が「副業OK」の方針を出し始めたことが大きいですね。
会社員のように給料が決まっているわけではないので、頑張れば頑張るほど収入につながっていくのが個人事業主の魅力です。また、会社員と平行して行うことで、自分の知識も経験も増えていきます。副業OKの会社は、そうした人としての成長も望んでいるんだ考えます。
ところで、平行して事業を始め、個人事業主としての収入が、本業(会社員)の収入を上回ってしまう人もいます。そうなった場合、いろいろな対応方法がありますが、今回の記事では、個人事業主としての事業をより拡大するために法人化する方法を徹底解説します!
1. 法人成りを考えるのはどのタイミング?
個人事業主としてある程度の収入を得ると、多くの方が「法人化」を考え始めます。そのタイミングは
- 利益(税金)面
- 信頼度面
の両方から考えましょう!
1-1. 利益を多く残す(節税対策)
個人事業主としてビジネスを継続していると、携帯電話代・家賃・自家用車のガソリン代などの経費と言われるものを引いた利益はすべて個人所得となりますので、そこには所得税が課されます。
その税率は、5%から45%までの7つの段階に分けられているのですが、実は所得の金額によっては法人税率よりも税率が高くなってしまう場合があります。
たとえば、資本金1億円以下の中小企業を営んでいる場合の法人税率で考えると、所得が800万円以下の場合は19%、800万円を超える場合は法人税率が23.2%となります。
それに対して個人の所得税は最大45%かかりますので、所得によっては法人税率の方が大幅に税金が安くなります。
このように売り上げによっては、法人成りする方が節税なる場合もあります。
法人成りを検討する売上金額は、書籍や税理士さんにより結構幅がありますが、それらを総合すると500万円~1,000万円が良いでしょう。
また消費税に関してもメリットがあります。
個人事業主としての課税売上高が1,000万円を超えた年から起算して、3年目から消費税が課されます。資本金1,000万円未満で法人成りをすることにより、原則として設立2年目の年度までは消費税は課されないルールとなっています。
今では10%となった消費税、最大2年間も消費税が課されないというのは、法人成りする十分な理由となります。
また法人化した場合は、あなたの給料は役員報酬という形で支払われます。つまり会社として役員報酬を支払うことになり、その分は経費として扱うことができます。
役員報酬を経費として処理すれば、所得税は利益から役員報酬を引いたものにかかってくるので節税対策にもなります。
個人事業主の時は、売り上げに対して税金を払いながら、個人に対しても所得税がかかってきていたので二重に税金がかかりますが、個人の税金の支払いだけで済むようになります。
このように法人成りすることで、さまざまな節税のメリットが受けられます。
家計の節約と同じで、節税はすればするほど会社や従業員、そして自分に売り上げが還元されます。
消費税が増税されたように、税金についても時折ルールの改定が行われます。経営者としてそういった情報はきちんとチェックして、対策していくことが大事です。
1-2. 会社の信頼度を増すため
法人成りすると、会社の信頼度は飛躍的に向上します。「個人事業主」より「株式会社代表取締役」の方が、肩書だけでも言葉の響きが良くなりますよね。
個人事業主として事業が成功し、売り上げが伸びてくると取引先の規模も大きくなってきて、その結果会社が伸びていきますが、取引先が大きな会社になればなるほど、あなたの会社情報には目を光らせます。
実際、取引先として会社の情報を調べようと思っても、個人事業主は店舗の所在地などを登記する必要がありません。情報を調べることさえできないのです。
それに対して、法人は登記簿謄本により、会社の所在地や資本金、役員などの重要事項を確認できます。相手の会社への信頼度が大きく変わるのも、納得のいくところです。
こういったことから、個人事業主という形態では新規の取引を断られてしまうことが起こっています。個人事業主である間は取引先として選ばれなかった相手であっても、法人という形態をとることによって信頼度が増し、取引ができる場合があります。
1-3. 個人事業主にはないメリットを受けるため
個人事業主の多くが毎年頭をかかえる確定申告は、申告できる期間が決まっている上に、個人事業主以外も医療費控除などのさまざまな控除手続きをする人がたくさんいます。
そのため、確定申告場所は非常に混み合いますし、手続きが終わるまで半日程度は覚悟しておかないといけない場合もあります。
事業によっては、忙しい時期と確定申告が重なってしまって準備の時間を取るのも大変という方もいます。
そんなときは法人成りすることで、決算月を自由に決めることができます。自分の会社の事業が忙しくない時期に決算月を設定すれば、準備や手続きをバタバタすることなく行うことができるからです。
あまり考えたくない状況だとは思いますが、個人事業主はその事業に失敗した場合、抱えている負債はすべて自分で返済しなくてはなりません。
それに対して法人は倒産した場合、出資した範囲内でのみ返済の責任を負います。倒産した時のことを考えて法人成りしておくというのは前向きな考えではありませんが、もしもの時に大きな借金を抱えなくて済むので、イチからやり直すためにはありがたい制度となります。
さらに詳しく!
法人成りは個人ではなく法人として手続きをするので、もし社長が仕事を継続できなくなったとしても、新しい社長に変わることで事業を引き継ぐことができます。
自分が病気や何らかの理由で事業を継続できなくなっても、会社はなくなりません。
個人事業主の場合は、たとえ事業を引き継ぐことになっても新しく認可を受けなくてはいけませんし、取引先にとっても、手続きなどが面倒なことになります。
経営者である以上、事業が好調な時とそうではない時について考えをめぐらせておく必要があります。法人成りする以上、それ相応の責任が出てきますので、どうするべきかしっかり検討しましょう。
2. 法人成りの手続きとは?
では、実際法人成りするときはどんな手続きがあるのでしょうか?
個人事業主は税務署に開業届を提出するだけで大丈夫でしたが、法人成りにはかなり複雑な登記の手続きが必要となります。この手続きについて、それぞれ注意点を挙げながら、どうすればいいのかをお伝えします。
2-1. 基本事項を決定する
法人成りするには商業登記をしなければならず、その書類を作成しなければいけません。そのために、まずはあなたの会社の基本事項を決めていきます。
個人事業主として事業を行っていた場合はそのまま引き継げるものもありますが、どのような形態の会社として法人成りするのか決める必要があります。
会社の基本事項とは
- 社名
- 会社の形態
- 本店住所
- 事業目的
- 役員構成
- 資本金
会社の形態とは、主に株式会社と合同会社のどちらにするかを選ぶということです。
さらに詳しく!
新しい会社法では、有限会社が設立できなくなり、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つが設立できる会社形態となりました。
このうち、合資会社と合名会社は、会社の債務に対し無制限に責任を負う必要があるなどデメリットがあり、これから会社を作るのであれば、株式会社か合同会社から選べばよいでしょう。
合同会社は株式会社と比べると会社設立にかかるコストが半分以下で済みますが、将来的に資金を調達する時や、他の会社に対する信頼度という点において、株式会社の方がメリットが大きいです。
一般的な知名度も合同会社と株式会社とでは圧倒的な差がありますし、従業員を募集するとなった時にも株式会社の方が信頼度が高くなります。
社名・本店住所・事業目的は、個人事業主の時のままで引き継ぐことができます。
ここに注意!
個人事業主で在宅で仕事をする場合などは大きな問題にならないことが多いですが、賃貸物件に居住していて、そこを本店住所にするときは賃貸契約書を確認しなければなりません。
居住用の物件を会社の住所として使用すると契約違反になる場合があります。分譲マンションでも同じように、管理規約に反する場合があるので確認が必要です。
役員構成については、法人成りする前が個人事業主だった場合は自分だけで登記することが多く、追加するのであれば配偶者のみ追加という形をとる場合が多いです。
資本金は個人事業主の時に提出した直近の確定申告書から決めることが一般的です。資本金は一度決めると自由に増減できませんので、税理士などと相談しながら決めましょう。
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2-2. 必要書類の準備と作成
あなたの会社の基本情報が決まれば、あとはそれを定款(ていかん)に入れて、その他の必要な書類を作成します。
定款(ていかん)とは、法人の目的や組織、活動、構成員、業務内容など、法人の基本・基礎となる情報を記載した書類です。紙で作成する他、電子定款も認められています。
法務局のサイトに必要な書類が掲載されていますので、それを参考に書類を作成することができます。
合同会社の場合は、定款の作成だけで次のステップである登記の申請に進むことができますが、株式会社の場合は公証人による定款認証が必要です。
どちらの場合も、定款の作成方法は2つあります。
1)紙にプリントアウトして綴じる
2)PDFファイルで作成し、専用ソフトで電子署名する
紙の定款の場合は印紙代として4万円かかりますが、電子定款であれば印紙代が必要ないので、少しでも安く済ませたい方には電子定款がおすすめです。ただし、専用ソフトをわざわざ購入する意味はないので、電子定款を作成する際は代行業者に頼むことが一般的です。
ここに注意!
会社設立について相談できるのは司法書士や行政書士となりますが、法務局での登記申請手続きまですべて行ってくれるのは司法書士だけです。
手続き全般をお願いしたい場合は、司法書士の先生に依頼しましょう。
2-3. 法務局に登記申請に行く
必要な書類が完成し、(株式会社の場合は)定款認証が終わったら、登記ができます。法務局で登記申請を受け付けてもらった日があなたの会社の設立日となります。
登記は郵送で行うことも可能ですが、「会社の設立日はこの日」という希望がある場合は法務局までもっていきましょう。特に司法書士に書類作成を依頼をしていない場合、書類に不備が見つかることも少なくありません。
自分で決めた会社設立日が他の日になってしまうのを防ぐために自分で持っていき、不備がないか確認しましょう。
法務局に登記申請を行ったら、およそ1週間~10日の登記の審査期間がありますが、その審査が終われば登記事項証明書の取得が可能となります。
さらに詳しく!
登記事項証明書は、登記簿謄本と呼ばれることもありますが、同じものです。
銀行融資や重要な契約を締結する時に、補助金の申請時などで必要となります。
法務局に出向いて取得する方法と、インターネット上で取得する方法があり、やはりインターネット上で取得する方が手数料が安く済みます。
3. 法人成り後の手続きとは?
登記が無事終わっても法人化する際にはまだ必要な手続きがいろいろあります。自分の仕事を継続しながら手続きをすることになるので、すべてが終わるまでは忙しい毎日を過ごすことになるでしょう。
手続き内容によっては数日~数週間かかるものもありますので、順序よく手続きを行いましょう。
3-1. 会社名義の銀行口座開設
会社を設立したら、個人事業主の時に利用していた銀行口座から、会社名義の銀行口座に切り替える必要があります。口座を作り替えたら、売上金の入金や売掛金の回収、経費などの支払いなどはすべてその口座で行うことになります。
銀行口座の開設は即日でできるものではありません。しかし、事業を行う時にお金の入出金は必ず出てくるものです。できるだけ早く口座の開設手続きをとりましょう。
ほとんどの場合、登記事項証明書が必要となりますので、取得したらすぐに銀行窓口に行き、まずは相談しましょう。
ここに注意!
個人事業主としての売上金は、法人ではなく個人事業主として回収する必要があります。
もし個人事業主の売り上げを法人名義の銀行口座に入れてしまった場合は、そのままの金額を引き出して移動させましょう。
3-2. 個人事業の廃業届出を提出
法人成りしたら、税務署や都道府県、そして市町村に法人設立届出書など、会社設立の書類を提出しなければいけません。会社設立に関する書類の提出と合わせて「個人事業の廃業届出書」も税務署と都道府県、または市町村に提出します。
個人事業主は所得税・個人事業税・個人住民税の納税を行っていますが、廃業するとこの納税の必要はなくなります。ただ、そのためには自分で届け出をしないといけません。
ここに注意!
個人事業の廃業届出書を税務署に提出する期限は、廃業から1ヵ月以内と決まっています。
法人設立届出書の提出期限は設立から2ヵ月以内となっているので、廃業届出書の方が早く提出期限が来ます。
3-3. その他の必要な届け出
業種によっては許認可を得ないといけないものがあります。
この手続きが終わらないと事業を実際に開始することができません。口座開設と同じく早めに手続きしましょう。
許認可を得る必要がある業種とは
- 飲食業
- 宅地建物取引業
- 建設業
- 理容業・美容業
- 有料職業紹介事業
- 人材派遣業
などです。それぞれに申請先が決まっていますので、注意して下さい。
ここに注意!
同じ業務で個人事業主としての許認可を受けていたとしても、新しく会社を設立した場合、今度はあなたの会社としての許認可を取得する必要があります。
4. まとめ
最初の手続きは大変ですし、法人となることで法律上の制約も増えますが、法人成りしてしまえば税金面でののメリットも大きく、取引先からの信用も増します。
事業を大きくしていく上では必要な手続きと言えるでしょう。
ただ法人成りするには登記が必要なのでかなりの労力が必要ですし、法人成りが可能な住所かどうか、資本金はいくらにするかなど細かいことをしっかりと決めなくてはいけません。また手続きが終わった後も口座を開設したり、個人事業主の廃業の届を出したりと様々な手続きをする必要があります。
法人成りする時に一番大事なのは、個人と会社とをしっかりと区別することです。
個人事業主の時は、個人の収入や支出と同じ口座で業務上の金銭のやりとりを行っても問題ありませんでしたが、法人成りした場合はそれは通用しません。個人と会社とは別物として、しっかり分けなくてはいけないのです。
今はちょっとした買い物でも、クレジットカードやモバイル決済を利用する人も多いですが、しっかり分けておかないと会計処理が面倒になります。
そして今までの事業を引き継ぐ場合は、設備や資産を引き継ぐという手続きも必要になりますし、あなた自身の収入はあなた自身が決めた役員報酬となります。
どのタイミングで法人成りするのか、手続きを自分で行うのか専門家に依頼するのか、何を決める必要があるのか、法人成りの手続きの前に一度しっかり勉強しましょう。